『善悪を知る木 知識の木』

              牧師 林 宣雄

 聖書には多くの植物名が出て来る。

 人類の始祖アダム・エバの物語りはもっともよく知られている。ここに登場する「善悪を知る木」は食べるによく、目に美しく賢くなるには好ましいと形容されている。この植物は何を指すのか。リンゴ説が多く、その他にブシュカン説、アンズ説、カリン説、イチジク説など多くある。ヨーロッパの画家たちは創世記に記された情景を基に数多くの名画を残している。詩人や小説家たちもこれにならいリンゴとした。ミルトンが楽園喪失の長詩を次のように記している。

 of tasting those fair apples I resolved
 (その美しきリンゴを味わわんとおもう切なる願い満たすを猶予すまじと心さだめたり)

 この古典の影響により、いつのまにか禁断の木の実はリンゴと定説化された。エデンの園の地理的な位置については、エデンから1つの川が流れ出て楽園を(うるお)し、そこから4つの川が分かれ、その1つがユーフラテスという記事(創世記第二章8節〜14節)から、現在のイラン北部の高地に、この木が生育していた。日本には古くから中国を経て入った。私たちが食するリンゴは近代になって、アメリカを経てヨーロッパ産のものが入って来た。

 始めは北海道、次に青森、長野と広まった。紅い色彩、適当な酸味を持った新鮮な甘味である。ミカン類のブシュカンが「アダムのリンゴ」と呼ばれ、古くから聖地にあったのでどちらを指すのか混乱したよう

である。中の芯の部分はアダムも()み切れず無理に呑みこもうとしたので、男子に(のど)仏が残ったといわれている。

「主なる神は人に命じて言われた。『園のすべての木から取って食べなさい。ただし、善悪の知識の木からは、決して食べてはならない。食べると必ず死んでしまう。』」            (創世記第二章16節〜17節)

                        〔2005年6月26日〕