「無名戦没者」−千鳥ヶ(ふち)と昭和

 

牧師  林 宣雄

 

 「わが大君に召されたる 命()えある朝ぼらけ 讃えて送る一億の 歓呼は高く天を突くいざ()け つわもの日本男児」

 上掲の歌声に送られて多くの若者が戦地に赴いた。そして、戦地で死んでいった。その数は三百万人といわれる。同胞の命が戦争で奪われていった。その死者たちは靖国神社に英霊として(ごう)()されているのでしょうか。

 はたして戦死者は神・霊なのでしょうか。南方に、中国・朝鮮やシベリヤに国家のため天皇のため正義の戦いであったのでしょうか。悲しいかな!! 無名戦死者でありました。愛するわが子、わが夫を奪われた。千鳥ヶ淵()(えん)の死者たちの叫びが響いてきます。靖国で口を閉ざし声も出さずに神・霊として祭られたのでしょうか。忘れてはならない戦争です。「お国のために兵隊さんが必死で戦っているおかげで、みなさんはこうして暮らしていけるんですよ。」と学校で幼少期に教えられた。真実の歴史を知らず、知らされず聖戦として信じこんでいた小国民であった私です。

 千鳥ヶ淵()(えん)を訪れたことが忘れられません。そこに立つこと行くことがなにかしら(はば)まれている、という思いがありました。アメリカの無名戦死の兵士のように一つひとつの墓標がたてられておりません。死者の占める場所は僅かです。三十三万体以上の死者は地下堂の壷のなかに押しこめられているのです。

                〔2006年7月23日〕