「今日、生きている歴史観」−その2−

 

林 宣雄牧師

 

(2)ギリシャ的古典的運命史観

 ギリシャ人は生滅変化する世界の中で不変にとどまる<自然(フーシス)>を観察し、理性の法でもある自然の法則性を探求して最初の学問を打ちたてた。自然の美を貝象の形象に彫像して偉大な造形美術や悲劇詩や文学を創り出した。

また多数のポリス(都市国家)を建ててこれを統治する正義・法の意義と価値と有効性を省察して政治の知恵を磨いてきた。真・善・美の超越的諸価値とその統一である<善のイデア>を追求した。人間の理性を神的ロゴスによって導きエロースとしての哲学に達した。

 このようなギリシャ人の合理的思考法の哲学は、直ちに歴史の探求と解釈にも応用される。歴史家ヘロドトスによれば、歴史の探求は史料や史実を調査して人間の過去の行為を究明することであった。人間の内的自然や外的自然、そのもろもろの組成因子や調和統一ないし不協和音的破壊の原理はたちまち神々の像に刻まれ、その神々の像や人形の衣装つけを用いて、闘争や和解の物語を描き出し、たくさんのギリシャ神話が生まれてきた。

 歴史の始源と終末、根源と目標とが永遠のイデーとして二元論的に時間の流動の上部に静的に定位せられ、歴史的になり、歴史の直中に突き入ったものとしては捉えられていない。だからその時間概念は自然的時間にとどまり前方的に進む歴史的時間としては捉えられていない。

 

〔2006年10月29日〕