「今日、生きている歴史観」−その4−

 

林 宣雄牧師

 

(4)ルネッサンス的近代的進歩史観

 近代思想一般は、ヘレニズム古典古代文化の再生、更新、復興としてのルネッサンスに源流を発する。近代的歴史観とは、ルネッサンスから流れ出る西欧近代思想の趣旨をなす歴史観をさす。ルネッサンスという言葉は再生、更新、革新、改革、新生などを意味して、人間性の再生、革新と共に自然、大地、宇宙の再生と革新を意味していた。では、このルネッサンスに溯る近代思想に共通な歴史観は何であったのか。それは人間中心の世界像に応じた人間の自己確信を中心にすえた歴史観である。哲学者デカルトによっていわゆる思惟のコペルニクス的転因が成し遂げられて以来、大陸合理論、英国経験論、フランス啓蒙主義をへてドイツ観念論への発達、対決、凌駕を貫いて人間は自己自身を確信した。

 近代思想は完成思想である。世界事象を眺めるその眼鏡は<進歩の図式>である。しかし近代歴史観の最大の欠陥は、人間悪の深淵の看過であった。宗教改革の意義を失い人間悪は権力や専制、搾取や戦争は悪の現象形態である。人間性の限界、その有限性が忘失された。歴史はここでは始まりも終りもない。ただ相対的な進歩の過程だけである。人間が神になるという誤りをおかした。不安と恐怖、虚無、暗黒、混沌に対して神の創造史と救済史が新しい方向指示を与えるものとなる。

 

〔2006年11月12日〕